実は、ハーバード大学が先導してコーチングの改革に乗り出した背景には、コーチング産業が巨大化する一方で、効果を実証する科学的データもなく、実際に効果のあったコーチング手法を再現する方法や体系化された理論もなく今日に至っているという実態への危惧がある。

 医師には、技術や資格面での厳格な統一基準があるのに、コーチにはそれがない。本来であればコーチにもそれ相応の技術や資格が課されるべきであったとする意見も多い。コーチングには誰でも参入できクライアントを持てるため、玉石混交の状態のまま市場規模が拡大してきたという深い反省が込められている。

 ハーバード発のコーチング改革というこの新たな動きの大きな要因として、何よりもコーチング産業に関わる人が増えたことで、米国におけるコーチングの質やコーチとしての資格取得をめぐる不透明さに対するコーチたち自身の目が厳しくなってきたこともある。

 こうした構造的な不完全さを解消するために、コーチングにおける科学的基盤の構築を心理学に求める動きがここ数年、急速に高まってきた。そこで大いに重宝されているのが、ポジティブ心理学の理論や実証的な研究データなのである。